C1 擬態するオブジェ

 擬態するオブジェ

 周囲の環境や共同体が違えど、私は私ですし、彼女は彼女、あの人はあの人です。

 しかし、あるひとりの人が、あるときはAのように映り、あるときはBのように映るということがあり得るように、存在の持つ意味や性質とは、場所や時間などの周囲の状況によって変わるものです。

 それゆえ、私たちが何かを認識するとき、私たちはひとつの存在にそれぞれ異なった別のイメージを抱くことができます。

 「擬態」とは「ふりをすること」「他のものにようすや姿を似せること」を意味する言葉です。

 「ひとつの存在」または「複合としてのひとつの存在」でもよいですが、それが異なる別の存在に「擬態」をした立体作品を作り、鑑賞者に新しいものの見方を提示してください。

 提出物:立体作品

 大きさ:持ち運べる程度

 出題日:10月12日

 提出日:10月19日(13時半厳守)

 講評日:10月26日

(出題:鈴木)

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「生命のジュース・赤」 既製品のジュースが、魚に擬態をしている。 飲み口が目になっているところ、ストロー が背びれのようになっているところ、また 表面の質感など抽象化しながらも一定のリ アリティーを持って、イメージを変えてい るところに質の高さがある。中に赤い血が 本当に入っているように思えて凄く面白 い。( 鈴木 )

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ConCola 形、大きさがそのままでも、素材が変換さ れることによる異和を再確認する。液体→ 個体へと変化するコンクリートの存在とし ての軽さ/物質としての重さを感じた。(三浦)

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「防衛本能」と題された、細かな糸群の中に、 布のクズ切れが浮かび上がった作品。ほん の少しの衝撃や風の流れによって、揺れ動 いてしまう儚さを立体として表現した秀逸な作品。普段私たちが生活している中にも確かに存在しているが、彼らは空気に擬態して、その存在を目の前に表してくれることはないのであろう。( 早田 )

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「ひとを纏うひと」とタイトルされる。すべて金属質素材による女性のトルソのオブジェである。身体を形作っている部分は、 スプーンの凹状部分を重ね合わせて作っているアイディアが面白い。甲殻類を思わせる表皮が素材そのものによって擬態化しているところが魅力だ。( 入江 )

 

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お皿を銭湯にすることによって、プリンが 銭湯に描かれてる富士山に見える。ひとつの存在に異なったイメージを見るという課題の趣旨によく応えているし、細かい作り込みも可愛らしくて良いと思った。( 鈴木 )

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「Rouge the LIP Pretend to be someone」 口紅は化粧品のなかでも代表的で、女性の 擬態そのものを象徴するアイテムと言え る。そこに変身前(後?)のオブジェを重 ねる事で、課題の意図をうまく表現した。丁寧に作り込まれた細部にまで作者の気持ちが込められている。(安東)

 

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人間の頭蓋部の黒・赤の断面のように見えるオブジェ。黒は脳が浮遊し、ネジクギの眼が飛び出して、本体の断面を示しているのに対し、赤はその上に被さるように柔らかにそして顔の表層のように黒のオブジェを覆っている。断面の切り口が重層することで、擬態の切り口を示している佳作。(入江)

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「クララ」と題された巨大なバッタの模型 を直立に表現した作品。実物をはるかに超えたスケールを精巧に作り込むことによって、日常にあるものを見たことのない様態に変質させている。直立させたときのプロポーションも良い。( 早田 )

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「立体」への擬態と題された岡本太郎の太 陽の塔を薄っぺらく引き伸ばした作品。私たちが見ることで認識することに切り込んだ秀作である。( 早田 )

 

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「無題」普段、飲み慣れている飲料の容器をカット して衣服表面に貼付けただけの作品。 だが、飲料そのものは体内に吸収されるが 残された容器が抜け殻となって身体の輪郭 を擬態するストーリーがオリジナリティを 感じさせる。(安東)

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時間の概念を変える作品。さらに時間に質量を与えることで、時の重みを我々に再認識させてくれる秀逸な作品である。( 山村 )

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無題 擬態するオブジェ。人間が脱力する時、そこには形容しがたい空気感が漂う。その空気は目に見えない領域を醸し出し、周囲に人を寄せ付けない独特のものである。哀愁というアンニュイな空気を可視化したデペイズマン的作品。( 山村 )

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肉屋のコロッケをよくぞここまで再現してくれた。部活の後の上神井駅の近くにある肉屋で食べたコロッケの味は十代の青春そのものである。疲労の極に、現れるコロッケは「オアシス」そのものである。( 山村 )

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一見ふつうに見えるスウェットが特定の状 況において 「擬態」となる面白さを表している。さらなるディティールが表現されているとぐっと良くなった気がします。( 三 浦)

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